『ルピナスの花畑』
私には、長年抱き続けて来た夢があった。
その夢とは、野原一面に咲くルピナスの花畑を見ることであった。
実は38年前の1月初めに、ニュージーランドの、マウント・クックの山麓を訪れた時、私はそれらしきものを見ていたからである。 なぜそれらしきものというのは、その時花は既に終わりかけていて、まばらに咲き残った状態であった。 その旅は花の見頃を調べないで、漠然と旅したことを深く後悔したのだった。
そして今年、漸くその夢を果たす時が来た。観光案内では、ルピナスは、11月下旬から12月にかけて、満開を迎えるという情報から、今回は11月下旬に旅をすることにしたのである。
旅をする場合、人はいくつかのタイプに分けられる。
旅の目的を設定し、入念に現地の情報を調べ、目的達成に向けた準備をする人。大まかに下調べをして、目的をある程度果たせば良いと思う人。 行き当たりばったりで、特別な目的もなく、その時々の旅を楽しめれば良いと思う人。私の場合は、2番目のタイプになるだろう。
さて、今回の私の旅の目的は、長年抱き続けて来た、マウント・クックの山麓一帯に咲きほこる、色とりどりのルピナスの花畑を見ることであった。
クライストチャーチ経由で、マウント・クックに向かった。途中、テカポ湖畔にある、『良き羊飼いの教会』に立ち寄り、満開のルピナスを見て、マウント・クックの山麓のルピナス畑を想像して、胸が高鳴った。 そして、漸くホテルに到着し、さあ花畑トレッキングだと勇んで山道に急いだ。しかしルピナスの花畑はそこにはなかった。
オラキ・マウントクック国立公園が、1990年に世界遺産に指定されて以降、ルピナスは此処の在来植物を侵す、繁殖力の強い外来植物として、忌み嫌われ駆除されたのであった。 今は、あの初夏の青空をバックに輝く、白銀のマウント・クックと、色とりどりなルピナスが織りなす絶景は、もう見られなくなったのである。
それまでに培われた、観光の名所としてすっかり目に焼き付けられた、ルピナスの花畑が、世界遺産の名のもとに消えてしまった。 そして、私が長年抱き続けた夢の中からも、私の抱く絶景は残念ながら消えてしまった。
人類は、様々な分野で何々の保護という観点から、あるものを守るために、あるものを抹殺してしまう歴史を作って来た。 害獣の駆除、外来植物の駆除、さらに最悪な民族抹殺など、神の領域を侵す冒涜的行為も行ってきている。 何が真実で、何が真実ではないのか、判断が難しい問題ではあるが、その決定をする人の資質が問われる。 ルピナスの駆除が、果たしてどのような結果になるのだろうか。 しかし、ルピナスは今でも、ニュージーランドのさわやかな初夏の風に吹かれ、マウント・クック以外の野原には、沢山群がり咲いている。
その夢とは、野原一面に咲くルピナスの花畑を見ることであった。
実は38年前の1月初めに、ニュージーランドの、マウント・クックの山麓を訪れた時、私はそれらしきものを見ていたからである。 なぜそれらしきものというのは、その時花は既に終わりかけていて、まばらに咲き残った状態であった。 その旅は花の見頃を調べないで、漠然と旅したことを深く後悔したのだった。
そして今年、漸くその夢を果たす時が来た。観光案内では、ルピナスは、11月下旬から12月にかけて、満開を迎えるという情報から、今回は11月下旬に旅をすることにしたのである。
旅をする場合、人はいくつかのタイプに分けられる。
旅の目的を設定し、入念に現地の情報を調べ、目的達成に向けた準備をする人。大まかに下調べをして、目的をある程度果たせば良いと思う人。 行き当たりばったりで、特別な目的もなく、その時々の旅を楽しめれば良いと思う人。私の場合は、2番目のタイプになるだろう。
さて、今回の私の旅の目的は、長年抱き続けて来た、マウント・クックの山麓一帯に咲きほこる、色とりどりのルピナスの花畑を見ることであった。
クライストチャーチ経由で、マウント・クックに向かった。途中、テカポ湖畔にある、『良き羊飼いの教会』に立ち寄り、満開のルピナスを見て、マウント・クックの山麓のルピナス畑を想像して、胸が高鳴った。 そして、漸くホテルに到着し、さあ花畑トレッキングだと勇んで山道に急いだ。しかしルピナスの花畑はそこにはなかった。
オラキ・マウントクック国立公園が、1990年に世界遺産に指定されて以降、ルピナスは此処の在来植物を侵す、繁殖力の強い外来植物として、忌み嫌われ駆除されたのであった。 今は、あの初夏の青空をバックに輝く、白銀のマウント・クックと、色とりどりなルピナスが織りなす絶景は、もう見られなくなったのである。
それまでに培われた、観光の名所としてすっかり目に焼き付けられた、ルピナスの花畑が、世界遺産の名のもとに消えてしまった。 そして、私が長年抱き続けた夢の中からも、私の抱く絶景は残念ながら消えてしまった。
人類は、様々な分野で何々の保護という観点から、あるものを守るために、あるものを抹殺してしまう歴史を作って来た。 害獣の駆除、外来植物の駆除、さらに最悪な民族抹殺など、神の領域を侵す冒涜的行為も行ってきている。 何が真実で、何が真実ではないのか、判断が難しい問題ではあるが、その決定をする人の資質が問われる。 ルピナスの駆除が、果たしてどのような結果になるのだろうか。 しかし、ルピナスは今でも、ニュージーランドのさわやかな初夏の風に吹かれ、マウント・クック以外の野原には、沢山群がり咲いている。
2023年11月19日のマウント・クックの景色
2023年11月19日のテカポ湖畔に咲くルピナス